夜ふかし録

クラリネットの条件検討

良し悪しの見分け

リードやマウスピース、楽器のことをつらつらと書いている。楽器は、何かとモノで悩むことが多い。管楽器雑誌でプロのどなたかが、「我々は自分にとってちょうどいい抵抗を求めているんです」と言っていて、なるほどと思った。

 

リード、マウスピース、楽器。奏者に近いパーツほど音に与える影響が大きいとよく言われる(つまり影響最大のパラメータは奏者自身)。ここ数ヶ月、ひとりでリハビリのような練習を繰り返してきて、なんとなくクラリネットを吹くための感覚が出来あがりつつあって、以前と変わってきたのは、何かが足りない/おかしいときに、その問題が自分/リード/マウスピース/楽器のどの部分にあると感じるか?だと思う。

これは特に、音の芯をしっかり作りたいと思うようになってからだろう。

 

同じ練習でも、考える内容によって少しずつ奏者は変わっていくものだと思います。

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若手

橋本杏奈さんという日本人クラリネット奏者がいる。ロンドンを拠点に、ソリストやオーケストラの客演奏者として活躍しているようです。

 

自分が高校生だった頃にはすでにCDを出していたと思う。池袋のHMVに置いてあった記憶がある。

ジュリアン・ブリスやハン・キムと同世代。

 

高校生の自分は、ポール・メイエがスターでカール・ライスタープリンツに遠く憧れるような時期(?)で、あまり日本人クラリネット奏者を聴こうという気持ちはなかった。

橋本杏奈/A Touch of Anna - A.Rosenblatt, Tartini, J.S.Bach, etc

今年になってはじめて聴くのだけど、芯があって安定しており、どの音域でも華やかでキラキラした成分を持ちつつ、表現は地に足がついていて緻密に感じられた。

コントロールがとてもよく効いており、アマチュアクラリネット吹きとしてはこんなふうに楽器を操れたらいいのに!と心底思う演奏ぶり。

 

楽器はピーター・イートンというイギリス製のようです。

音をあらわす言葉づかい(2)

以前の記事の続きです。

 

私の疑問は、「まるい音」とか「太い音」というのがどういうことなのか?それをある程度客観的に評価する方法はないのか?ということ。

 

客観的に評価するための、現時点でもっとも手軽で強力なのは練習を録音することでしょう。自分の演奏や練習を録音して聴き返すと、リアルタイムで自分が感じとっていたのとは違った印象を受けるはず。自分の感覚と客観的な聴こえ方を対応させ、また理想に近づくためには必要かつパワフルな手段です。

 

ここで、録音して聴こえた自分の音が「太い」

のか「豊か」なのか、「響いている」のか、それとも「苦しそう」なのか…ここではじめて、自分の音を言葉で表現することに再現性が出てくると思います。また、言葉で表すことによって、自分以外のだれかと音に対する認識を共有し、上達につなげることもできるでしょう。

 

目に見えない音を言い表すのは実は難しくて、太いとか丸いとかいった表現は、特に初心者の頃にはピンとこないのが現実なのではないでしょうか。

時に、指導者(特にクラリネットの専門家ではない指導者)はやや安易に「丸い/太い音を出して」と言うことがあり、演奏者が明確なイメージを持っていない場合は、かえってどうすればいいかわからなくなってしまうこともある…と私は思います。

 

大事なことは、出てくる音のイメージと、実際の奏法のやり方とは別々に考える必要があるということです。

太い音をめざして太い息を入れるのはよくあるパターンですが、会場の広さによっては、せっかくの音が客席まで届かなくなってしまうという副作用もしばしば見られます。

また、同じ音でも、狭い部屋で至近距離で聴くのと、大ホールの客席で聴くのとでは印象が少なからず変わることも経験されることです。

 

 …というわけで、やや話の内容が発散しはじめましたが、まとめます。

自分の出したい音がどんな音なのか、明確にイメージを持ち、言葉で表してみること。実際の演奏を録音して、イメージと現実との違いを認識すること。それぞれの状態と、奏法とを対応させること。

こういった注意で、再現性を持って演奏をgrade upする、あるいは幅を広げることができるのではないかと思っています。

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眠いけどよく眠れる季節

「眠れる」は、ら抜き言葉じゃないよね?

 

涼しくなり、むしろ朝なんか寒くなって、早くも布団から抜け出しづらい日々である。

とにかく夏はすべてが不調な自分からすると、睡眠の質も向上している気がしてならない。朝目が覚めてまだ眠いけど、熟睡できた実感は今の方が真夏よりも強いのだ。

 

夏は寝苦しく、いまどきのふつうのマンションではコンクリートが熱を溜め込む感じもあって、冷房をつけっぱなしで寝る。道理として身体は冷える。これがよくないのか?

エアコンで十分に気温を低くして、素肌をエアコンの風には晒さずに寝るといいんだろうか。

 

夏をしのげるようになるには、まだまだ経験が必要そうである。

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ダダリオのリード

クラリネットのリードはバンドレン社がとても有名だが、同じくらい有力なのはダダリオウッドウィンズというブランドだ。むかしはRICOという名前だった。

数年前にダダリオ社が買収したようで、その後は現在のブランド名になった。

 

www.daddariowoodwinds.jp

 

たしかRICO時代から、バンドレンに比べて品質が均一である点が評価されていた。とくにグランドコンサートセレクトシリーズはかなり普及していたと思う。

 

私はバンドレンのV.12を主に使ってきたのだけど、ときどきダダリオ(旧リコ)を試している。

RICO時代はいわゆる赤箱、Thick blankというのが最も相性がよかった。バンドレンに比べるとやや野趣を感じる音色だった。

 

ダダリオが買収した際、かなり設備投資をした(ヤマハ、「RICO」改め「D'Addario WOODWINDS」のプレゼンテーションを開催、クラリネット/サクソフォンのリード、マウスピース新モデルなどを紹介 | BARKS)ようで、フランス製のリード工作機を導入したりケーンの畑を買ったり、企業努力をしたらしい。


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たしかに、レゼルヴクラシック3.5を吹いてみると、私の場合B40にちょうどいい(やや柔らかめ)硬さで、一箱の中でばらつきは少ないと感じる。均一さではバンドレンよりもダダリオに軍配が上がると思った。

音色に関してはやはりレゼルヴクラシックはやや野趣を感じるが粗野ではない。また、2019年に発売されたレゼルヴエボリューションは、近年のトレンドといえるヒールの高い設計で、音色も立体感というか色気というかそんな要素を感じる。

 

品質が安定しているリードで選択肢が増えるのは、奏者にとってとてもありがたい。 

少なくとも練習用のリードで困ることは減りそうだからだ。

音をあらわす言葉づかい(1)

物事の上達には客観的な視点が必要不可欠です。自分のアウトプットを振り返り、理想と現実の違いがどこにあるのか?何を変えれば理想に近づけるのか?など、楽器に限らず必要なプロセスです。

 

定量的な評価がカンタンなもの—テストの点とか、短距離走のタイムなんかは、そのまま結果が記録にも使えます。それでは、音楽では?

ヴィルトゥオーゾ(超絶技巧)的な目標であれば、メトロノームがひとつの指標になるかもしれないけど、よく響く音や美しい音色というのは、量的な評価はなかなか難しそうです(少なくとも手軽な計量方法はない)。

 

音についてクラリネットでよく言われるのは、「太い音」「まるい音」「芯のある音」「木の音」などの表現。ほか、鋭い音、きつい音、ぼやけた音、などの表現はおおむねマイナスイメージとともに使われることが多いでしょう。

(つづきます)

ノーラン作品の愉しみ

"TENET"が公開され、私のスケジュールも空いたので観に行ってきた。

wwws.warnerbros.co.jp

 

シナリオや設定の考察はそういうのが得意な方がすでに色々な記事をつくってくれている。

 

個人的な感想は以下の通り。

 

  • "インセプション""インターステラー"以来のSF大作。
  • ハードなSFの装いの一方、未知の「未来人」がシナリオに関係してくるなど、オカルト心を刺激する要素もある。
  • 重厚長大なオブジェクト(艦船や航空機、風力発電機、トレーラーや消防車)、金属の軋みやそれを連想させる効果音、歪んだ低音を多用した音響は過去作からさらに磨きがかかっていた。映像、ストーリーとマッチしていて良い効果を発揮していると思う。音響に関しては悪趣味すれすれともいえるのではないかと思うが、そこまで追い込んでいるともいえる。
  • 時間の逆行は難しい
  • ジョン・デイヴィッド・ワシントンはcool
  • エリザベス・デベッキは美しい
  • 可能なら、最大の効果を発揮するIMAXシアターでみるべき。