夜ふかし録

クラリネットの条件検討

安定性と柔軟性のはざまで

Apple musicのような定額サブスクストリーミング配信は音楽好きの生活を豊かなものにしてくれた。

メジャーなレーベルの作品が聴けるのはもちろんだが、インディーレーベルその他マイナーな音源にアクセスできるのはとても素晴らしいことです。

たとえば海外のコンクールで優等賞をとった若いクラリネット奏者の受賞記念アルバムだとか。こういったものがすぐ聴けるのはとても豊かなことだと思う。

 コンクール受賞者なので当然とても素晴らしい演奏なのだが、既存のメジャーレーベルの作品と違ってレコーディングの水準で良くも悪くも作り込まれていないのも興味深いポイントだ。音楽の流れに大きく影響しないちょっとした音ミスなんかはそのまま配信されていたりする。ライヴ感がありますね。そういう音源を聴いていると、音が少しばかりひしゃげたり均一さが失われたりするとその瞬間は「あっ」と思ったりするが、次の瞬間には、大事なことはそんなことではないと思い直し、ひしゃげるような柔軟な演奏をしていることにこそ魅力があったり、はたまたそれでもやはり安定性にも魅力があるな…、など、柔軟性と安定性の切ないせめぎ合いに思いを馳せたりする。

柔軟性、安定性は、仕掛けによってどちらを重視するか決めることもできる。極端なところではエーラー式やウィーン式の楽器と、ベーム式の楽器とでは、おそらくベーム式のほうが柔軟性は総じて高いだろう(単に演奏者の傾向の違い(エーラー式の奏者はドイツオーストリア系が多いだろう)を聴いているだけなのかもしれないが…)。ベーム式に限っても、マウスピースや楽器のメーカーにより無視できない傾向の違いがあるのではないか。

自分が魅力を感じる演奏は何が魅力になっているのか、を考えることで、奏法についても仕掛けについても芯を食ったアプローチができるのだろうと思う。