言葉づかい
響きが多い/少ない、よく響く音/響かない音、倍音が多い/少ない……という表現をよく目にする。
まず"響き"や"倍音"が何を指している言葉なのか、はっきりしない場合が少なくないと思う。
プロの音楽家同士であればほぼ同じ理解を共有しているのかもしれないが、それもよくわからない。
アマチュアではさらに感覚的にしか使われていないのではないかと思う。
なにかの測定器で計れる量なのかどうなのかもはっきりしないし、気にされていないのではないか。
だから、同じ人の発言ならともかく、別の人が別々に語っている"響き"が同じものを指しているのかどうか、いちおう疑ったほうがいいと思っている。
できれば、音のスペクトラム分析などをやって、感覚として"倍音が多い(少ない)""響きが多い(少ない)"と評される音が、実際に物理学的な意味での倍音が多いのか少ないのか、真に異なるパラメータが何なのか、を突き止めて、用語を統一できればいいのかもしれない(そういう研究ありそうだからもしご存知の方がいらしたら教えてほしいです)。
私の実感
上記の但し書きをした上で、最近、私の感覚としてクラリネットの音の"響き"の多い/少ないが腑に落ちたのでメモしておきたい。
まず、"響き"は"音の芯"と比較・対照されるものなのだと思われる。これは、SNSなどで経験豊富なアマチュアやプロの奏者の方がそのような図式で解説している例が多くある。
実例
響きが多いと感じる楽器― RC(A管)
(響きが相対的に少なく、)音の芯がはっきりしていると感じる楽器― Tosca
自分で書いておきながら、Toscaの音が響きが少ないと書いてしまうのは語弊があると思う。ただ、RCとToscaを比べると、RCのほうが響きが目立つように今の私は感じている。R13と比較するほうが図式的にはきれいだが、私はR13を持っておらずR13とRCを直接比較したわけではないから、ここでそうは書けない。
RCで、R13系のような明瞭な音の芯を同じように出そうとすると、苦しくなってしまうのかもしれない。楽器の設計の違いがそのように出てくるのかもしれない。
楽器の持っている音の性格(響きが出やすいのか芯が出やすいのか)に無頓着に、その正確に合わない音を出そうとすると、息の抵抗のように感じられたり、仕掛けを変えることで複雑に代償しようとしてしまったりして、奏法の迷子になったりスランプになったりする原因になりそうだと感じた。
たぶんこれは楽器本体に限らず、マウスピースやリガチャー、リードいずれにも同様の性質の適不適があるのだと思われる。