夜ふかし録

クラリネットの条件検討

M15と56 rue Lepic

前回の記事の続編。

 

「56 rue Lepicの4番」を新しく1箱買って、M15との相性をみてみよう!と考えたものの、正直、黒箱の4番なんて、M15以外には合うマウスピースあんまりないな…(硬さ的には5RVLで使えそうだけど、例のサイト的にはAmerican cutとFrench layという、相性の良くない組み合わせ)と、あんまり前向きになれなかった。

ところが、昔買ったリードが残っており、買って開封はしたけど演奏にはあまり使っていない状態の黒箱4番が9枚、準備できた。ついでに、V.12 31/2+も数枚みつけた。

 

結果

Lepicの3.5番では、M15との組み合わせでは「吹けるけどちょっと軟らかすぎる」という感想でした。

今回4番を合わせると、いわゆる抵抗もしっかり出てきて、音色もしっかりして、合っていると感じた。やはり3.5番はM15には軟らかかったと思う。

さらにV.12の31/2+も試してみたが、これもほどよい抵抗で音色もよく、よくマッチすると思った。Lepicの4番、V.12の31/2+番は、Vandorenの資料ではM15とマッチするリードに挙げられていて、能書きどおりといえる。

 

前回の記事でちらっと「M15は、合っているリードでもそもそも抵抗が少ないマウスピースなのではないか」ということを書いたが、これはなんとも言えない。少なくとも、Lepicの3.5番と4番で比べると、4番のほうで明らかに抵抗(吹きごたえ)が感じられたので、極端に抵抗が少ないとは言えなさそうである。

 今回の結果から、個人的に得た結論は「M15で練習(演奏)するつもりなら、リードはLepic 4番を用意する」といえる。

なお、興味があったのでB40LでLepic 4番を試してみると、やはり硬すぎる感じで、音は出るが曲を演奏するのは現実的ではなかった。

 

次の疑問

残る興味としては、類似したデザインプロファイルをもつV21やReserve Evolutionの3.5+や4は、Lepicとはやや硬さの分布が違う可能性があり、歩留まりの改善や音色・レスポンスの違いの点でより快適かどうか、あるいは相補的な利点があるかどうか、ということは調べる価値がありそうだ。

もし、Reserve Evolution 3.5番のなかにM15に合うリードが多ければ、M15-B40L-B40が同じリードで使い分けられることになり、歩留まりの改善が期待できるが…感覚的には、おそらくEvoの3.5番はM15には少し軟らかいと想像される。マウスピースのスペック表的にも、この3つのマウスピースを同一リード銘柄の同一硬さで使うのはやや無理がありそうに感じるので、これは今の時点ではあまりやってみる気が湧かない。

むしろ、5RVLとの使い分けを念頭に、V.12 31/2+番をM15と5RVLで分けると、歩留まりがいいかもしれない。デザインプロファイルの傾向も違うし。

 

補足

以前のエントリで、マウスピースやリードの使い分けへの執念が我ながら強いということを言った。これは理由があり、ここまでの何回かのエントリでも何度か出てきた、「歩留まり」という言葉にも表れているのですが、それは「リード1箱10枚買っても使えるリードが少ないんだけど」という不満・疑念でした。

これはクラリネット奏者、さらにはリード楽器奏者の共通の悩みに通底すると思う。

 使えるリード・合うリードが少ないというのは単純にお金や時間がかかるということだけでも困りごとだが、個人的にはもう一つの心配の種になる。それは、「自分の奏法は何か不具合があるのではないか?」「リードが合わないのは、自分のアンブシュアや奏法が原因なのではないか?」ということ。つまり、リードが合わないということは、精神衛生的に良くないことなのである。

 なので、どんなリードとマウスピースがマッチするのかを把握することは、この不安を取り除くために必要と考えたわけです。つまり、たとえば7JBとV.12 4番の組み合わせは、スペック表的に高確率に合わない。こういう明らかなアンマッチはすぐわかるが、たとえばB40とLepic 3.5はどのくらいマッチしそうなのか?あるいは5RVLとV21の4番は?など、いっけんして相性がわからないような組み合わせに、何か実感と合うような原則がないか?という疑問があったわけです。

よく、「リードやマウスピースは奏者の好み」といわれ、実際究極的には好みだと思うけれども、「実は自分の選んだ組み合わせがそもそもマッチ率の低い組み合わせで、だから合うリードが少ない」ということがあるのかもしれない。時間とお金は無限ではない(全然ない)ので、損な組み合わせを選ぶよりは、マッチ率の高い組み合わせを選びたいよね。というのが、一連の"実験"のモチベーションです。

M15-B40L-B40

前回のエントリに続き、マウスピースの比較。

今回はM15を加えて、比較してみることにした。

M15はMシリーズのマウスピースで、以前の記事でいうところのAmerican facing curveを持つマウスピースに該当する。

 

全体の印象

M15は「息の通り道」がせまく感じられた。このせまいということはネガティブな意味ではなく、マウスピースが息をまとめてくれる/息の当て方を示してくれるような感覚があり、吹きやすさにもつながると思う。一方、せまい息の通り道を窮屈に感じて吹きづらいという人もいるかもしれない。

硬めのリードでも抵抗が少なく感じるのは、ロングフェイシング・狭ティップオープニングの効果なのだろう。

今回使ったlepic 3.5は、M15に合わせるリードとしてはやや軟らかいのかもしれない(Vandorenの資料では4から5が推奨)。

おそらく、M15というマウスピースは、バランスがとれている状態での抵抗がそもそも小さいのではないかと感じた。息の圧力や量のコントロールは、繊細さを求められる部類なのかもしれない。

 

B40はくらべてみると好対照で、「息の通り道」はあまりはっきりしない(制限されない)感じで、リードによる抵抗がしっかり感じられた。この抵抗という意味は、息とリードの硬さとの釣り合いが取れている状態での抵抗感のことを言っています。これが極端に大きいと音が出しづらいし、極端に小さいと暖簾に腕押しのような状態でコントロールが難しい、そういうもの。

 

B40Lは、上記2つとの比較では、意外とM15の特徴があるように感じました。B40よりもM15に近いと感じるのは、息の通り道の狭さ。ここに息を当てましょう、と言われているような感覚は、B40では全くなく、B40LとM15ではしっかりそれを感じます。高音域の発音が容易というのは能書きにもあるこのマウスピースの売りの一つのようですが、M15も同様の長所がある気がします。

一方、適合するリードの硬さはB40寄りに思われました。56 Lepic 3.5で言うと、M15は「もう少し硬めのほうが真価を発揮するかな」とはっきり感じますが、B40Lでは「多少硬めにする余地もあるけど、ほぼちょうどいい」くらいで、この点は明らかにB40 likeな特徴。

 

Reserve evolutionとの相性

Reserve evolution (硬さ3.0)との組み合わせをみると、今回はB40Lとの組み合わせが最もしっくりきた。硬さ、抵抗、反応のバランスがとれており、明瞭でフォーカスされた音が自然に出る感覚。

おそらくリードが当たりの個体で、B40でも吹きやすいのだが、発音のレスポンスや抵抗の感覚は、B40Lとの組み合わせに比べるとやや鈍く・重く感じられた。

 

上記を踏まえた個人的な気づき

  • Reserve evolutionはB40Lにマッチする。
  • これは硬さ以上に、デザインプロファイルがマッチしているのかもしれない。
  • B40は息の通り道をつくってくれるマウスピースではないようだ。奏者が意識して息をまとめる、リードの鳴るツボを探す努力をしないと、効率が悪くフォーカスのない音になってしまうのかもしれない。
  • M15はB40、B40Lにくらべ硬めのリードを要求するようだ。抵抗が少なく感じられ、コントロールの感覚がB40、B40Lとは異なる可能性があるが、より硬めのリードでの評価が必要だろう。

 

M15の評価のため、56 lepic 3.5+〜4やV21 3.5+、Reserve evolution 3.5などを用意して試してみたい。(このあたりの硬さになると、M15以外にマッチするマウスピースがかなり限られてしまうのが難点ですね。)

 

 

執念

このブログを読み返すと、クラリネットのマウスピースとリードに関する執念がすごい。

同じような内容を年余にわたって繰り返し書いていて、ちょっと常軌を逸した感じもないではない。

 

自分が何をしたいかというと、クラリネット奏者を悩ませる「リードとマウスピースの相性」や「リード選び」というテーマに、自分なりに原則のようなものを見出したい、ということ。

 

プロやハイアマチュア/セミプロの方々には当たり前のことがたくさん含まれていると思うので、知識がある人からみたら🐴🦌みたいなブログかもしれないが、自分にはそういった情報源はいま乏しい。さらに、アンブシュアの違いも大きく影響すると思うので、記載した内容がどれだけ普遍性があるかもわからない。

それはそれとして、少なくとも自分のなかではある程度再現性のある原則を目指して、メモがわりに記録していきたいと思います。

 

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5RV L-B40L-B40

総合的な印象

5RV L、B40Lは音のフォーカスがつきやすく、吹奏感としてのリードの鳴るツボが吹き手にわかりやすい。

B40は息が制限される感じが少なく、息の入力に対して音の変化が柔軟に感じられる。音のフォーカスやリードの鳴るツボは、5RVLとB40Lに比べると不明瞭に感じる。

 

5RVLとB40Lを比べると、音の明瞭さは5RVLの方がより明瞭に感じられる。

 

Reserve evolution 3.0と上記マウスピースとの組み合わせ

B40では、演奏に問題はないが抵抗がやや大きく感じられる。演奏に問題がないというのは、このリードでスケールやエチュードの練習をすることが可能で、吹きこなせる感じがするという意味です。

B40L、5RVLでは、抵抗が大きすぎる感覚はなく、ちょうどいい硬さだと感じられる。

 

今回の感想

Reserve evolution 3.0を合わせるのであれば、5RVLやB40Lのほうが苦労が少ないと感じた。

B40の柔軟性や音色を気に入っているのであれば、硬さを変えるか、別のデザインのリードを探す方が、「歩留まり」がいい可能性がある。

 

*私は長くB40に慣れていて、5RVLはともかくロングフェイシングのB40Lには十分慣れているとは言えない。なのでB40Lに慣れた後に感想が変わる可能性がある。

 

Reedのdesign profileに関する海外の情報

前回のエントリ以来、メジャーなリードブランドのプロファイルによる傾向の違いが気になって、検索エンジンで調べてみた。検索につかったkey wordはclarinet, reed, profile, vamp, blank, facingなど。

すると、下記のウェブサイトがひっかかり、ある程度まとまった情報にあたることができた。

抜き出してみる。

 

  • クラリネットマウスピースには、American facing curveとFrench facing curveがある。
  • filed cut、thin tipのリードはfrench curveに合う。
  • unfiled cut、thicker tipのリードはAmerican curveに合う。
  • おなじマウスピースであれば、vampの長いリードの方がvampの短いリードよりも少ない抵抗で演奏できる。
  • vampの長いリードは、short facing curveには用いないほうがいい。用いた場合、抵抗が強く、硬く感じられる。

'Reed' all about it...Part 1 of 3. Vandoren & Gonzalez (Clarinet Reeds) | Dawkes Music

Clarinet Reed Help | Everything related to clarinet reeds

 

これらは、ある程度は説得力があり実感とも一致する内容だが、どの程度コンセンサスが得られているのか、または根拠があるのかまではわからない。記載に一部齟齬があったりもする。

ただ実際、V.12とB40、lepic 56とMシリーズ、V21とBDシリーズ、そしてReserve evolutionのマウスピースとリードは同時期に発売されており、対応が良いようなので、リードのデザインと相性の良いマウスピースとの傾向はあるんでしょう。

 

具体的なリードのプロファイルは、メーカーの発表資料を参照するべきだろう。

レゼルヴクラシックの意味?

久しぶりにクラリネットを練習した。時間がなかったのでてきとうに吹いただけ。

リードもなんとなく手に取ったレゼルヴクラシックの3.5。

すこし古い個体で、演奏会には使えないものだが、音は出るし反応もいちおう返ってくるものだった。

 

いま、自分の目指す方向性はまずは「明瞭で軽やかな、運動性のいいクラリネット」で、さらに「しなやかさと艶を備え」られたら尚いいと考えている。レゼルヴクラシックは、前者の特徴は比較的達成しやすいと思う。

レゼルヴクラシックの「クラシック」ってどこから来るんだろうなぁ。

レゼルヴスタンダードに比べて「クラシック」なんだろうけど、その意味は。

 

イ) リードのデザインがクラシック(アンファイルド)。

ロ) 音の目指す方向性がクラシック(より古典的で素朴)。

ハ) ジャズやポップ音楽よりもクラシック音楽を指向している。

 

が考えられる。

ハ)は、じゃあレゼルヴスタンダードやエヴォリューションはクラシック向けじゃないのかというと全然そんなことないと思うので、違うかな。

10年の変化と死別の影響

2011年。震災があり津波があった。

2012年。死別があり大きなショックを受けた。

2012年以降、5年以上にわたり、死別は尾を曳いた。

 

自身の感覚として、2012年からの数年間、頭の回転が遅くなり、それまでできていたことの一部でよく失敗するようになったと感じた。凡ミスが増えた。自分が馬鹿になったように感じることが増えた。

そして、2018年以降、そうした感覚は徐々に薄くなり、むしろ自己の能力が多少向上したような感じがある。

 

振り返るとこれは、いくつかのことが並行して起こっていたように思える。

(1) 実際に、認知機能が少し低下していた。

(2) 自己効力感が損なわれたなどの理由で、自己評価が下がった。

(3) 実際に、自己の能力が向上した。(20代後半の数年なので、この時期に認知機能が向上あるいは生活空間に適応したとしてもおかしくはないと思う)

 

(2) は、死別による心因性の現象といっていいと思う。細かくいうと、社会人になり、初めてのtaskに日々さらされ、ストレスを受けていたことも(2)に結びつく。

 

検証が難しいのは(1)だ。

自分の考えでは、やはり死別後の少なくとも

1-2年は認知機能低下があったのではないかと思う。しかし、(3)で全て説明できるようにも思う。ここの検証は難しい。

気になるのは、仮性認知症として知られる現象だ。日常生活は送れていたわけだから認知症のレベルではなかったと思うが、新幹線の切符を買い間違えるなど、手続きの不注意が増えた。

死別の影響がごく軽度の仮性認知症として現れていたと考えると、自分としては腑に落ちる。

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