コクがあって苦みがあって、酸味はそんなに多くないのが日本でよく飲まれていて人々が想像するオーソドックスなコーヒーだと思う。これは深煎りの豆が多数を占めているだろう。焙煎後の豆が濃い茶色~黒っぽい色だ。
浅煎りの豆は色が明るい茶色だったり赤っぽかったりする。
浅煎りの豆で、抽出に無頓着に淹れると、けっこう酸っぱくなってしまうことが多い。
自分もそうで、酸っぱいコーヒーは苦手で、浅煎りの豆のおいしい淹れ方というのがわからなかったので、避けていた。というか、単純に浅煎りの豆が好きな人はあの酸味が好きな人で、完全に好みが違うので分かり合えないのだ、と思っていた。
ブルーボトルコーヒーは、浅煎りの豆を多くつかうサードウェーブコーヒーの有名なコーヒーチェーンなのだが、そういうわけでスタバ的な苦みやコクを中心とした味を想像していくとびっくりする(私は初めて行ったときびっくりした)。
4-5年ぶりにブルーボトルコーヒーにいったら、浅煎りのコーヒーの何がよいのかがすんなり理解できて、別の意味でびっくりした。
「浅煎りのコーヒーはとにかくすっぱい」という誤解があった。
浅煎りの豆だからといって酸っぱいことが必ずしも良いことではない。酸っぱすぎるのは淹れ方が不適切で、豆の本来のおいしさを引き出せていないだけかもしれない。
そのうえで、浅煎りの豆では抽出時間や湯の量を厳密にすることで、繊細な味を引き出すことができるのだった。
コクとか苦みはコーヒーの味のごく一部に過ぎず、別の層には繊細な酸味や甘みの層が重なっていて、上手に淹れるとこういった多次元の味が折り重なって立体的=奥が深い味、をつくることができる。少し大げさにいうとこういうことだと思う。
まぁたぶん、深煎りの豆も本来はそうやって気をつかって淹れるのが正道なのを、私が無知だから適当に淹れていて、でも深煎りだと酸味が出づらいからなんとなく飲める味になっていただけ、というのが真相なのだけども。
結果、奥深い味をもつ浅煎り豆を上手な人に淹れてもらって(=お店で)飲む、ということににわかに目覚めてしまいました…。
こういうお店、いわゆるサードウェーブ系のコーヒーショップは、バリスタの動きが意味ありげだったり、ドリッパーとかメジャーとかのその他小道具がいちいちミニマルデザインだったりとかで、なんとなく「けっこうなお点前で」という空気を醸している。
親しんできたつもりのものでも、全然違う顔をもっているものなんだな、と思いました。