クラリネット奏者のソロアルバムが発売されることはそんなに多くないが、オーケストラの首席奏者は数枚出していることがある。
プロのワザをじっくり堪能できるソロアルバムは個人的には大好物でして。
パイパーズのレビューなどでチェックしているんだけど、網にひっかからず気付かないものもある。今どきCD屋さんにもそんなに行かないし。
この連休中、フェスティバルを使っているプロを調べていたら、N響の首席奏者 伊藤圭さんが2018年にソロアルバムを発表していたことに気づいた。
伊藤圭 & 冨田珠里亞の「Reveusement 藍の詩」をApple Musicで
Reveusement 藍の詩/伊藤圭、冨田珠里亞
ドビュッシー、サン=サーンス、プーランクといったフランス系メジャー作品を中心に、タイユフェール、ハーン、トマジという渋めの選曲も入るラインナップ。
テレビで聴かれる伊藤さんの音(オーケストラのなかでの)からは、「重心の低い安定した美音」という印象を主に受け取っていたんだけど、この作品集では、柔軟で、かつ惜しみない振れ幅の広さをもって表現がおこなわれている。
プーランクやトマジでは多用される高音域でフレンチクラリネットらしい色彩を放っていて、一方で音像が歪んだり品を失うことはない。
低-中音域での表現のパレットもきめ細かく、息に即応して音色がグラデーションを形成する。当然ながら、興を削ぐような飽和した音は聞かれない。
……こんな録音が出ていたとは!