夜ふかし録

クラリネットの条件検討

「思い出が消えてゆく」

という曲があります。
ゆらゆら帝国のVocalだった坂本慎太郎さんがソロで発表したアルバム「幻とのつきあい方」に収録されている。

このアルバム全体に言えることとして、死ぬことに対する注意というか関心が背後にあると思う。ゆら帝時代の「空洞です」にも言えるかもしれない。

色鮮やかさがないとでも言おうか、夕日が一面を夕日色と黒のコントラストにしてしまうように、色彩が覆われているかのような印象を受ける。それは日常目にする様々な光景が本当は鮮やかなのに、目の前にある考え事や悩みが心を占拠しているために鮮やかさが覆われてしまうみたいなもの。

「幻とのつきあい方」How to live with a phantom

このCDに関して言えば、心を占拠しているのは「死ぬこと」だと思う。
「死ぬこと」に心を奪われていることとは、死にたいということではない。
そういう場合もあるかもしれないが、ふつうに生きている私たちが何かの拍子に/あるいは最終的には死んでしまう、という「当たり前」のことを不思議に思い始めてしまったために心を奪われっぱなしになってしまったのだ。

だから曲のなかの一人称の視線は茫漠としている。

僕は、死ぬことについて考え始めてしまって、茫漠とした視線で物事を眺める一人称に親近感を持ったのでした。