夜ふかし録

クラリネットの条件検討

言葉

言葉を発明したサルは、こんなことになるなどとは思っていなかったに違いない。
おそらく最初は単純な意思疎通の手段に過ぎなかったはず。

だが、指示語が生まれ、三人称が生まれ、抽象的な概念を汲む器にまでなったときに、言葉は当初の目的を果たすより遥かに遠くまでそのサルを導いた。

CERNの物理学者が研究データを交わすためにWorld wide webの原形をつくったときに似ているのかもしれない。

言葉はたしかに大きな器だった。だが本来はより直截的な目的のための器として生まれたのであって、抽象的な概念を載せられたのは偶々の果実。
目の前にないものまで言葉で運べるような気がするのは、最終的には錯覚なのだと思う。
自分の頭のなかにしかない感情を、言葉に載せて伝えられるという幸福な錯覚のせいで、人は苦しまなければならない。