夜ふかし録

クラリネットの条件検討

煙に巻く作風

3月最後の週は、仕事をはやく終わらせて演奏会へ。

東京都交響楽団/インバル  ショスタコーヴィチ交響曲第15番

この組み合わせのショスタコーヴィチ演奏に出会ったのは2012年3月の4番で、自分にとっては都響との最初の出会いでもありました。東京文化会館の飾り気のない残響も合わせて、すっかり虜になった記憶がある。2012年3月は、金沢でもOEK/井上道義ショスタコーヴィチ14番を演奏していて、これも、ドギツい曲の凄みのある演奏だった。
 
ショスタコーヴィチは人を煙に巻くのが好きな作曲家、というイメージがあります。あまりストレートに言いたいことを言わなかったり、それどころかウソの笑顔とかウソの泣き顔も駆使して、あたかも聴く側に本意を悟られまいとするようです。
この15番もずいぶん謎めいた曲で、CDで聞いてもあんまりピンときません。
ライヴの威力というのは凄くて、わからないなりにその世界に浸ることができます。
少し時間が経ってしまったのでイメージが遠くなってしまったのですが、2,3楽章は随分独特の世界になっていた記憶があります。
インバルと都響の演奏はデフォルメかと思うくらい、輪郭をくっきりさせることで官能的(eroticという意味ではなく、functionalという意味で)楽しみを引き出す演奏だと思います。マーラーでもショスタコーヴィチでも、チャイコフスキーでも…
その効果もあがっていましたが、この曲はそれだけですんなりと一筆書きになるような作品ではない。そうも思えました。
今回は1回きりの演奏会だったため、もし2回公演であればより完成度が上がっていたかも…とも思いました。
 

 ストラヴィンスキー室内楽/都響メンバー

更に翌日は小ホールでストラヴィンスキー

都響首席たちによるとても濃密な演奏会でした。

個人的にもっとも聴きたかったクラリネットのための3つの小品、三界さんのくっきりした音色と丁寧なつくりの演奏でしっかり心に刻みました。即興性のある作品という紹介がよくされますが、楽句の踊り食いみたいな曲だなぁという印象で、まるで気まぐれのようにも聴こえるフレーズたちですが面白く聴けました。

また、四方さんの演奏による「妖精の口づけ」による組曲は意外と聴きやすい曲でした。これは大学の頃にモデルオケ側として参加した、井上道義さんの指揮者講習会で題材になっていた曲も入っていました。

ほかにもスリマ・ストラヴィンスキーによる作品や武満など、濃ゆい2時間強を過しました。