夜ふかし録

クラリネットの条件検討

アンブシュアの思想

アンブシュアは形を追うのではなく、守るべきことを守って、それで出てきた音で判断するのがいい、とわかったのは3年前くらいか。その前に6年前にも一度同じようなことに気づいたはずだが、大学受験で間があいたら忘れてしまった。

 

1.くわえる深さ 

2.下あごと上あごの位置関係

3.下唇の薄さ

4.マウスピース先端への意識

5.楽器の支持

 

まず1.くわえる深さ。

4.とも関係してくるが、目安としては先端から5mm〜10mmくらいの間と思っている。10mmでは深いような気もする。
深すぎると息が楽器に入っていかず苦しい。リードの横から入る息が多いとリードミス多発の原因にもなる。
 

次に2.下顎と上顎の位置関係

上顎と下顎というか、上の歯と下の歯の位置関係といったほうがわかりやすいか。これはもしかしたら色んな流儀があるかもしれないが、普段の位置関係のまま、つまり下の歯のほうが上の歯より引けている状態がよい。普段以上に極端に引く必要はなさそうだ。
下顎を前に出しすぎると、下唇とリードの接するポイントが深くなり、第三倍音はくっきりフォーカスされた音になるが第一倍音がぼーっと輪郭のあいまいな音になる。第一倍音を明瞭に発音できるポジションを基本にする。
 

3.下唇の薄さ

下唇は常に薄く保つ。下方向への張りが弱くて下唇が弛緩していると、リードの振動を妨げることになって発音しにくくなる。スタッカートがうまく決まらないときのよくある原因のひとつ。
ただし、「下唇を薄く保つ」のであって「顎の力で下唇越しにマウスピースを噛む」のは全然違う。これをやるともう全てが狂ってくる。軽く力が入ってしまうことはよくあることだ…
 

4.

マウスピース先端は口の中にある。だがここがいちばん重要なのだ。発振するリードはマウスピース先端についているのだから。(ここがクラリネットの泣きどころだと僕は思う。弦楽器では弦とそれをコントロールする左手は常に目で見ることができるのだから…) 

腹式呼吸でしっかり送り出されてきた息がマウスピース+リードとうまく出会わなければいけない。圧やスピードのロスは非効率のもと。肺から気道を通ってくるのだが、口腔は気道にくらべて広くて、そのままでは圧力やスピードが下がってしまう。

そこで、舌をつかう。舌を持ち上げると、息は舌の上と口蓋の狭い間を通ることになる。このスペースは舌の上げ方でコントロール可能だ。目安としては指1-2本分くらい通る径になるよう口蓋と舌のスペースを狭める。

また、舌の先端がマウスピースの先端にだいたい合うような意識をもつ。(これが1.と4.の関連) 

5.楽器の支持 

これをアンブシュアの守るべき条件に挙げるのはトリッキーに思えるかもしれない。だがけっこう大事で、右親指で支えている楽器は上の歯にしっかり当たる状態を保っているべきだ。これは意識しないとすぐに守られなくなる。

すると意外にタンギングや発音がうまく行かなくなってくるのです…

グルウサンの教本にも、「右親指と上の歯の関係」は大事だと繰り返し出てくるんですって。

 

今のところ僕が意識して、実践できているかどうかはわからないけどしようとはしているアンブシュアの要諦はこの5つ。

これは今の師匠について整理されたことの束です。これらを貫くのは「効率よくダイレクトに通る音をだす」という思想だと思います。

これらのことを守るだけで吹奏感が劇的に変わる…と思いますよ。

初歩的なことかもしれませんが…

 

 

ただ、プロの演奏家でこれとは別の流儀の人も沢山いらっしゃる。マウスピースは深くくわえたほうがいいとする方もいらっしゃるし、下あごは前に出すという方もいらっしゃることだろう。要は、演奏しやすければいいのであり、奏法は系として成り立つものだと思います。