夜ふかし録

クラリネットの条件検討

向田邦子

さいきんは女性の作家を読むことが多い。

俵万智「トリアングル」、向田「思い出トランプ」「男どき女どき」、村山由佳「ダブルファンタジー」など。

けっこう奔放な性描写があったりしてラッキー、おう、姐さんすげぇな、と思うこともしばしばであるが、「人間関係への洞察」は男性作家には到底及ばないものがあると思う。

ここに挙げた方々に関していえば、主人公となっている女性はひと通りの思春期を終え、年齢的には「とても若い」女性ではない(こういう書き方って失礼になるのかな)、すこし「スレてる」視点を持っている女性。それがそのまま作家のミニチュアだとも思えないけれど、こういう視点をもつクラスタが存在するという事自体に若輩の自分としては戦慄を覚える。


「思い出トランプ」と「男どき女どき」はどちらも短篇集だけど切れ味が違う。
「思い出」のほうがどことなく品があるというか、「男どき女どき」がワイルドというか。「男どき女どき」のほうが怖い。
不倫とか、実際に不倫まではしないけど疚しさがある男女関係が主軸で、または自分とはタイプの違う同性に対する微妙な感情が描き出されている。
だいたい男女関係で疚しさが全くないってことはないと思うので、その疚しさをどうこうする仕方に人柄が出るのだ。美しい場合もあるし、醜いことも、情けないことも、恐ろしいこともあるかもしれない。

僕のおすすめは「思い出」所収の「かわうそ」と、「男どき女どき」所収「再会」です。