夜ふかし録

クラリネットの条件検討

作品紹介

カディッシュ

久しぶりに演奏会へ。たまたま時間があき、たまたま興味をそそる演奏会の情報が目に飛び込んできたので、当日券をとって聴くことができた。 演目はショスタコーヴィチの第九交響曲と、バーンスタインの交響曲「カディッシュ」。演奏は都響とインバルとのコン…

語ることが難しいものについて語る方法

雑文です。 自分がここ1週間ほどで見知ったもののうち、心動かされた幾つかについて。 (1) 公理主義的な確率の定義 統計学の教科書で出会った。 私は数学の素人なので、あまり多くを語る能力や知識はない… 古典的な確率の定義というのは、サイコロの目の出る…

短篇小説の世界

夏目漱石の「夢十夜」が好きで、思い出すたびに読み直している。夜にみる夢のように脈絡がとびとびで幻想的な、まさに夢幻の世界。似たような作品はないものか? ホルヘ・ルイス・ボルヘスや芥川龍之介の異世界が垣間見えるような短篇も魅力的だ。フランツ・…

本を読む本をつまみ読みした

「本を読む本」という本がある。読書の仕方を説く本で、ときどきSNSでも紹介されている。 当たり前みたいなことも書かれているが、今回書店で手にとって少し読んでみたら、その一節がとてもよかったのでそのまま購入した。 目の動き 眼球の動きを映画にとる…

個人的な体験とシン・エヴァ

『シン・エヴァ』を観た。(2回目) 考察は詳しい人が既にたくさんしている。 個人的な体験と重ねてその感想をメモしておくと… ゲンドウはやはりユイに会いたかった、ということで、それ自体はもう旧劇から既知の事実だったのだけど、本人の口から思いが吐露さ…

椎名林檎の23年(後)

しばらくまじめにフォローしていなかった椎名林檎を、事変の新作発表をきっかけに後追いでフォローしてみようという話。 フォローしていなかった期間の主な作品は「日出処」「三毒史」の2つのソロアルバム。これらを購入して聴いてみた。 … 刺さる曲とそうで…

椎名林檎の23年(前)

椎名林檎が好きで、2003年くらいからフォローしています。 東京事変も当然、アルバムを買って聴いており、「スポーツ」までは熱心なファンでした。 「大発見(ディスカバリー)」の頃は、むしろクラシックに興味の中心が移ったこともあってそこまでのめり込ま…

Kind of Blue

Miles Davisを聴き始めたのは高校生くらいから。 このアルバムはとても有名だけど、キャッチーさという点ではそれほどキャッチーではない、と思う。どちらかというとジャズを知っている人のほうが楽しめるアルバムということだ。 ほぼ同時期の(というとジャ…

若手

橋本杏奈さんという日本人クラリネット奏者がいる。ロンドンを拠点に、ソリストやオーケストラの客演奏者として活躍しているようです。 自分が高校生だった頃にはすでにCDを出していたと思う。池袋のHMVに置いてあった記憶がある。 ジュリアン・ブリスやハン…

ノーラン作品の愉しみ

"TENET"が公開され、私のスケジュールも空いたので観に行ってきた。 wwws.warnerbros.co.jp シナリオや設定の考察はそういうのが得意な方がすでに色々な記事をつくってくれている。 個人的な感想は以下の通り。 "インセプション""インターステラー"以来のSF…

新譜

クラリネット奏者のソロアルバムが発売されることはそんなに多くないが、オーケストラの首席奏者は数枚出していることがある。 プロのワザをじっくり堪能できるソロアルバムは個人的には大好物でして。 パイパーズのレビューなどでチェックしているんだけど…

最近読んだ本

この記事は数年前に下書きして、放置してあったものにごく短く書き足したものです。 自閉症スペクトラムの精神病理: 星をつぐ人たちのために 出版社/メーカー: 医学書院 発売日: 2015/11/24 内海健著。 精神科がらみの書籍を読むのは趣味であり、精神疾患の…

精神科とリウマチ内科は診療が似ていると思う。 慢性疾患 今のところ(残念ながら)根治療法がなく、疾患のコントロールを目標とする 対象とする臓器の機能構造が非常に複雑(神経系と免疫系) 多様な薬剤を、病態に応じて組み合わせて用い、少なくとも部分的に…

騎士団長殺し

読みました。もともと村上春樹は好きで、特に『ねじまき鳥クロニクル』は村上春樹を好きでない人も読んでおいていい作品だと思っています。 2000年以降の作品については、『海辺のカフカ』『アフターダーク』はよかったが、『1Q84』は???というのが率直な感…

カルボナーレの教則本

昔から欲しかったもので、なんとなく気分が乗ったので購入。自身がクラリネット奏者として第一線で活躍するAlessandro Carbonareが書いた教則本で、「音色」にフォーカスしている点が今までの教則本になかった着眼だ、みたいなことを言われていた気がする。 …

デュリュフレ

東京・春・音楽祭の最終公演を東京文化会館で聴いてきました。(余談ですが、ほぼベッドフリーの科をローテート中なので、こういったことが可能です。やはり、休日であっても呼ばれる可能性がある科では、ゆっくり演奏会を聴きにいったとしても、どこかで後ろ…

煙に巻く作風

3月最後の週は、仕事をはやく終わらせて演奏会へ。 東京都交響楽団/インバル ショスタコーヴィチの交響曲第15番 この組み合わせのショスタコーヴィチ演奏に出会ったのは2012年3月の4番で、自分にとっては都響との最初の出会いでもありました。東京文化会館の…

MIDORI

五嶋みどりは弾き姿も音色も節回しもすべて、完璧に近いと思った。おすすめは、チャイコフスキー、ショスタコーヴィチの1番と、バルトークの2番。

Mahler 3

マーラーとの出会いは中学生の頃、バーンスタインとニューヨーク・フィルの録音だった。大学1年の時には交響曲第1番の4thクラリネットを受け持って、ソロを吹かせてもらったりした。極彩色の管弦楽で、箱庭(といっても、巨大な箱庭だが)を思わせる作風のイン…

グレイト

連休は大阪で過ごしました。月曜日は日当直なので、土曜日夜からの丸一日しか居られませんでしたが、シンフォニーホールで今年2回目のグレイトを聴きました。京都市交響楽団、指揮は広上淳一。この曲はほんとうに幸せな曲だと思います。チャイコフスキーなど…

Gounod

グノー「小交響曲 Petite Symphonie」という曲があります。 木管九重奏という少し変わった編成(木管五重奏x2ひくフルート1)の曲ですが、人数がいる分、木5よりも簡単に(?)厚い響きを出すことができて、木管アンサンブルならではの軽快さもあり、初体験…

オケ映画の演技

公開中の「マエストロ」という映画を観ました。松坂桃李演じるコンマスが、西田敏行演じる訳あり凄腕指揮者に翻弄されつつオーケストラのなかで、云々、というお話です。なかなか面白かったです。観ていていくつか思ったこと…ドヤ感の表現のだめでの玉木宏に…

アルゲリッチのシューマン

マルタ・アルゲリッチによるシューマンの幻想曲、幻想小曲集(Op.12) この曲は弾き手によってだいぶ変わると思います。どの曲も弾き手で変わるんだけど、この曲はぼくの聴いてきた曲のなかではピアニストによって最も印象を変えるものです。 というのも、ル…

「火を熾す」(ジャック・ロンドン、柴田元幸訳)

生きるか死ぬかの極限状態 隔絶されている二者の対立 圧倒的な自然とその前にあって無力な個体 ひとつひとつに共通する背景をあげると、以上のようなものが挙がる。 また、 あくまで現実的で、不可思議な展開や唐突な抽象表現がない という特徴(特長)があ…

庄司紗矢香さんのベートーヴェン

Beethoven violin sonata No.1,3&4 Sayaka Shoji アリス=紗良・オットの特集番組をみて、同世代の演奏って刺激的だなと思い、タワレコを物色。アリス紗良オットは好みのCDがなかったので、昨年末都響とのバルトークを聴いた庄司紗矢香さんのベートーヴェン…

夜更かし

この投稿はほんとうに夜ふかし録です(時間帯的に)。 眠れなくて。明日は病院見学なのに。 「中国化する日本」という文庫本があります。與那覇潤さんという、愛知の大学で史学を教えている若手の研究者が書いた本。 筆者も自覚しているように誤解されやすい…

2人の音楽

N響の木管セクションは、ここ10年ほどでずいぶん人が入れ替わった。 クラリネットに限っても首席の2人がどちらも入れ替わったようだ。 そのうちの1人、松本健司さんのソロCDが知らないうちに発売されていて。 しかも、見ていた棚のそのすぐ横に、特にコーラ…

Inception、鷲田清一、初夏の休講

(1)Inceptionインセプションは2010年の映画で、映画館でも観たんだけどちょくちょく見返している。突っ込みどころもないわけではないし、注意深くみているとあれ?と思う瞬間もあるけど、自分にとってはそんなのどうでもいいな、と思える映画。「作戦」の目…

AMOUR、谷崎、病態生理

(1)アムール!愛!今日の記事は愛について…ではなくて、このあいだAmourという映画を観たのでした。http://www.ai-movie.jpあらすじもろくに読まずに映画館に行ったんだけど、思いのほか圧倒されて映画館を出ることになった。奥さんがピアニストである夫妻の…

週末…2日目

今日は昼食後思い立って、話題の「思想地図β2」を買ってきました。わざわざ柿木畠のうつのみやまで行って…震災から半年ということです。あの3月11日は生理学かなにかの試験で、医学類棟地下の試験場にいたんですが、微かに震度1くらいの揺れを感じたのを覚え…